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日本の文化を知る:家紋について

日本の風習
Category : 日本の風習日本

家紋とは家系を象徴する紋章であり、日本人の誰もが所有しています。花や植物、幾何学模様をあしらった伝統的な家紋の図柄は近代に通じるアート感覚にも溢れ、日本におけるロゴの元祖的な存在になっています。現在では家紋を目にする機会は少ないものの、家紋は伝統として生活の中に息づいており、冠婚葬祭などで今でも使用されることがあります。家紋は日本人でなくとも所有することが可能です。

家紋の歴史

家紋は平安時代の後期(11~12世紀頃)に貴族の間で使用されはじめたと言われています。貴族が互いの家系や地位を区別すべく、一族のシンボルとして使ったのが起こりです。公家が衣装や牛車に家紋を入れはじめると、視覚的な美しさからその流行が広がりを見せ、デザイン性の高まりとともに文化として定着していきました。

鎌倉時代(12世紀頃~)以降になると、武将が敵味方を見分けるために、又、手柄を将軍に示すために、旗印・刀・甲冑に家紋を入れるようになります。その為、家紋の文様は判別しやすく、且つ、軍勢を鼓舞するような個性的で「クール」な図柄になっていきます。以後、家紋の種類は急激に増えていきます。

家紋の使用は規制されていなかったため、江戸時代(17世紀頃)以降には一般人も家紋を使用するようになりました。特に商人、豪農、歌舞伎役者が一族を示す文様として、現代でいうロゴマークのように利用し、今日でも家紋は老舗ブランドの象徴として使用されています。一般庶民が家紋を実際に使い始めるのは明治時代(19世紀半ば頃)からであり、代々一族に受け継がれるようになりました。冠婚葬祭の時に着る着物や墓石に自分の家の家紋を入れる等、その慣例は今でも続いています。

家紋の種類とデザイン

家紋の図案には一族の思想や願いといった意味が込められており、例えば、花・植物の図柄には、藤、カタバミ、茗荷といった生命力の強い草木の葉がモチーフになっています。家紋は自由にデザインすることができる為、その数は正確には数えられず、2万とも、5万あるとも言われています。基本の図柄が幾つかあり、そのデザインを少し変える形で派生版が徐々に増えていった、という経緯です。実際に使用されているのは5000紋ほどと考えられ、いずれも正式な名称があります。

家紋のデザイン性は日本だけでなく世界的にも受け入れられています。1896年に2代目ジョルジュ・ヴィトンが当時流行していたジャポニスムの影響を受け、日本の家紋からインスピレーションを得て頭文字LVのロゴに花や星の模様を組み合わせた「モノグラム・キャンバス」を開発したといわれています。(参照:コトバンク 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ))

家紋デザインの一例

家紋の楽しみ方

歴史に名を遺した武家の家紋は知名度が高く、一般的に知られている有名な家紋が幾つかあります。例えば、将軍家、徳川家の家紋はフタバアオイという植物をあしらった「葵紋」です。神社やお寺を尋ねた際、建物の扉や瓦などをちょっと注意深く見てみてください。もし家紋のような模様があり、それが「葵紋」でしたら、そこは徳川家と縁があると分かります。天皇家の家紋は16花弁の「菊紋」であり、菊紋がある建物は天皇家と縁があると知ることができます。菊紋は日本の国章にもなっています。家紋の知識があると、歴史的な名所めぐりが楽しくなりそうです。博物館等で展示されている刀や甲冑にある家紋を見れば、どの武将の所有物だったかを知ることができます。武将の家紋は、ネット検索でキーワード「武将の名前+家紋」で探すことができます。

徳川家の家紋:丸に三つ葵

どうやって自分の家紋を調べる?

現在では家紋の使用は稀なので、自分の家の家紋を知らない人は少なくありません。しかし、冠婚葬祭に着る黒い着物(紋付)や墓石に入れるなど、場合によっては必要になることがあります。そのような時は、祖父母に聞いたり自分の家のお墓を見たりして、調べることになります。

家紋がどうしても分からない場合は、ネットで探して自分で決めることになりそうです。キーワード「自分の姓+家 家紋」で検索すると検索結果に“候補”が出てくるので、そこから選びます。元来、家紋は自由に決められるので、姓(名字)が同じ家でも異なる事が多々あり、しかも複数の家紋を所有する家もあるので、ネット検索で自分の家の家紋を確実に特定するのは困難です。そこで、検索結果に出てきた候補から気に入ったものを選ぶ、ということになります。候補が無ければ、家紋リストを参考に好きな図柄を選んで決めます。もしくは自分でデザインしてしまう、というのもありです。

家紋を手に入れる方法は?

日本人でなくても家紋はもちろん所有できます。基本的に家紋は自由に選んで使うことができ、使用するにあたって何処かに登録申請する規則はありません。ただし、国章となっている天皇家の家紋は使用できません。また、老舗や武家・寺社が所有する家紋(紋章)は商標登録されている可能性があるので注意が必要です。原則的に家紋は商用目的では許可なく利用できないと考えた方がよさそうです。気に入った図柄の家紋をレプリカの鎧やTシャツに入れる等、私物として個人的に楽しむという範囲なら使用しても大丈夫です。