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タトゥーがあると温泉に入れないというのは本当?:日本のタトゥー文化について

日本の風習
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「なぜタトゥーがある人は温泉施設で入浴を拒否されることがあるのか?」外国人旅行者向のツアーガイドをしている人は、度々そんな質問をされるそうです。もはやタトゥーはファッションの一部としてほぼ一般化。なぜダメかという理由を端的に説明するのはなかなか難しいものです。そこで、タトゥーが日本文化の一面である反面、タブー視されがちな理由について考えてみました。

タトゥーがあると温泉には入れない?

タトゥーを入れている人が温泉入浴を拒否されるか否かは施設側のルール次第です。以前は拒否されることが多いとされていましたが、最近はタトゥーOKの施設は増えています。日本人のタトゥーに対する意識は変わってきており、国によっては伝統文化のひとつだと理解しているので、施設側のルールには変化が出てきています。それでも入浴を拒否されるケースはまだあるのが実情ですが、入浴NGであってもタトゥーをシールで隠せばOKという施設もあります。

温泉浴場

それにしても、シールで隠す必要があるほどタブー視されているのはなぜでしょう?その理由は日本のタトゥー文化の背景を知ると理解できます。

日本のタトゥー文化の歴史

タトゥーは日本語で入れ墨(刺青)・彫り物などと呼ばれてきました。その歴史は長く、紀元前1500年頃から身体に文様を施す習慣があったと言われています。もともとは土着信仰に絡んだ魔よけや呪い的な装飾だったと考えられますが、時代が大きく流れるにつれて、犯罪者の刑罰としての「入れ墨」というように、その意味合いが変わっていきました。

17世紀に入ると大都市には人が集まり人口が大幅に増加します。それに伴い犯罪も増加し、治安維持の手立てが必要となりました。そこで、罪人の体に文様を刻み、見せしめにして犯罪を抑制する「入墨刑」という刑罰が取り入れられるようになります。しかし、その芸術性の高さから「粋だ」というイメージで人気が高まり、罪人でない人の間でも入れ墨が流行しはじめます。その結果、お洒落として派手で奇抜な入れ墨(刺青)=彫り物を入れる人が増えていき、罪人も刑罰の入れ墨に彫り物を加えてカモフラージュするようになり、入れ墨はお洒落と罪人の証という観念が混合した形になっていきました。

刺青(彫り物)

近代化が進む明治時代(19世紀後半)になると、入墨刑はもはや時代にそぐわないという理由で廃止となり、入れ墨そのものも禁止になります。しかし、さらに時代が流れた戦後の昭和期(20世紀半ば)になって再び合法化されたのです。禁止令時代に法を犯しても入れ墨を入れる人は、無頼漢やマフィアの一員等、反社会的な活動に加わる人の証として入れることが多くあり、合法化後もその風潮が続きました。今日では入れ墨は「タトゥー」の呼び名でファッション的な位置づけになってきていますが、それでも昔からの犯罪の匂わすイメージが残っているのです。

タトゥーがある人が温泉施設で拒否される理由について

温泉施設でタトゥーを理由に入浴を拒否された場合、なぜダメかと尋ねても「ルールだから」という返答になることが大半です。なぜなら、それは本当に単に「ルールだから」です。例えば、可愛い絵柄のタトゥーがあるAさんの入浴を許可した後に、威嚇的な反社会を匂わせる入れ墨があるBさんが入ってきた場合、AさんはOKなのにBさんはダメ、という線引きは不公平になるため、ルールで一括りにしてお断りしている可能性が考えられます。威嚇的な絵柄の入れ墨がNGな理由には、利用客の子供が怖がって騒いでしまうことを避けたいという配慮も想像できるところです。

日本の温泉旅館は老舗が多く、入れ墨禁止令の前後の時代、なかには数百年以上も絶えることなく営んでいます。長い経営の歴史の中で、入れ墨にまつわる経験が教えとして脈々と受け継がれ、入浴施設の一般ルールとして浸透して、今日まで続いているのかもしれませんね。